このページでは自己破産の具体的な手続きの流れや準備する提出書類を解説し、最後に自己破産を行う上で注意すること、確認しておきたいこと3つを解説していきます。
自己破産とは
自己破産とは、
ご自身の財産(家、家財や車両などの動産、預金など)を借金返済に充てて、残った借金を帳消し(免責)する手段
です。
どのような借金でも帳消し、免責になるわけではない点は注意が必要です。
ギャンブルや投機による借金、金融資産の隠蔽行為が発覚した場合などは自己破産できず借金が残る可能性があります。
自己破産はご自身で手続きを行うことも可能ですが、どうしても会社勤めの方や平日日中帯に動けない方ですとかなり時間がかかってしまいます。
自己破産のメリット
債務整理の手段である任意整理とは異なり、自己破産ならではのメリットがいくつかあります。
- 借金が帳消し、免責となる
- 債務者本人が手続きすることができる
借金は帳消し、債務免責となり債権者との間で交わされた債務契約は破棄され、免責となります。これが一番大きなメリットです。
任意整理の場合はあくまで和解を行うことで借金利息の減額、返済期間の延長による毎月の返済額の低減などを行うものなので、借金返済は完済するまで続きます。
申立、手続きを借金に悩む本人ができる点もメリットの一つです。
任意整理はあくまで弁護士や司法書士に依頼することが大前提で債権者との借金交渉を自分で行うわけではありません(特定調停なら自分で交渉できます)。
自己破産はご自身で裁判所を通じて手続きをすることが可能なので費用を安く抑えて借金の解決が可能です(管財人を選任すると費用は高くなります)。
自己破産のデメリット
以下で解説する手続きの流れにも関連しますが、やはりデメリットはあるので本当に自己破産をするべきか確認しておきましょう。
- 全ての借金が帳消しにならない可能性もある(免責不許可事由)
- 金融資産(不動産など)がある場合、資産処分などで手続きが長期化する
- ご自身で行う場合は手間がかかる(提出書類集め、裁判所訪問など)
- 官報に載る
- 仕事に影響する可能性がある
デメリットはやはり確実に全ての借金が帳消しにならない可能性も否めないという点と時間がかかる点です。
資産が無い人でも最低半年弱は時間を要するのですぐに借金問題が解決できるというわけではありません。
ご自身で自己破産手続きを行えるのはメリットではありますが、手間はどうしてもかかります。
面倒なのは書類集めと裁判所へ何度も足を運ぶことです。仕事をしながらだとなかなか進まないことがあります。
弁護士や司法書士へ依頼すれば手間と時間は軽減されますが、書類集めや資産処分などの手続きはかなり時間がかかります。
また、これから一定期間借金ができない人と認定されるいわゆるブラックリスト、官報に掲載されることで若干のデメリットになるでしょう。
資格を使う業務なら仕事に影響する可能性があります。
自己破産 手続きの流れ
自己破産の手続きの大枠の流れは下記となります。
弁護士や司法書士が代理で行う場合は一部の手間を省くことができます。
- 裁判所への破産・免責の申立
- 審査(面接1回目)
- 破産宣告、破産廃止の通知
- 審査(面接2回目)
- 免責の決定
- 復権
1.裁判所への破産・免責の申立
最寄りの地方裁判所に対して破産の申立を行います。
申立書用紙は地方裁判所の担当窓口にありますのでご自身で裁判所に提出を行う際はそれに記入します。はじめてで難しいと感じた方は担当者との相談予約することをおすすめします。
添付書類の追加を求められることもあるので、その際は再度提出します。
添付書類や書き方含め、司法書士や弁護士に相談することてスムーズにその後の手続を行うこともできます。
予納金を納付し申立が受理されたら裁判所より受理証明書が発行され、審尋(審査)の呼出状が郵送されてきます。
2.審査(面接1回目)
申立を行ってから1ヶ月後を目処に審査面接が設定されますので、指定の場所に伺います。
原則として、申立人本人が出席する必要があります。
破産について面接官からいくつか質問がありますので誠実に答えていきます。
15分くらいで審査は終了します。
3.破産宣告、破産廃止の通知
面接1回目で破産・破産廃止の要件を満たすと裁判所が認めれば、破産宣告及び破産廃止決定となります。
即日決定となるケースもあります。
破産決定書の通知は郵送で後日送られてきます。
4.審査(面接2回目)
面接2回目は免責に関する審議が行われます。
だいたい1回目の面接から2ヶ月弱のタイミングで行われます。
申立人の出席が原則で改めて借金免責に関する質問があります。
5.免責の決定
2回目の面接を経て、免責決定となると官報に公告が出されることになります。
免責決定の決定書は、裁判所より申立人へ郵送され免責が確定します。
6.復権
破産免責の後、破産者ではなくなろ、「復権」となります。
要は破産申し立てを行うことで一時的に破産者となり免責が確定したら破産者ではなくなるというわけです。
自己破産の手続きに必要な提出物やお金について
必要書類・提出物について
申立人全員が必ず用意しなければならないものは以下の通りです。
- 申立書類
- 破産申立書・陳述書(財産目録・家計状況などを記載)
- 戸籍謄本(外国籍の方は外国人登録証)
- 住民票(世帯全員記載)
- 通帳
自己破産費用について
費用はご自身で行う場合は以下の通りです。破産管財人が付くような場合は数十万円単位で別途必要になるケースがあります。
- 収入印紙
- 予納金2万円弱
- 切手代
- その他
- 破産管財人費用
弁護士や司法書士に相談して手続きを代行して貰う場合は着手金と基本報酬をあわせて20万円~60万円程度かかります。
事務所によって料金設定は様々なので費用はよく考えて依頼する必要があります。
ご自身の生活状況、資産状況による確認事項と提出書類
上記の書類に加え、生活状況、資産状況によって確認すべき点や追加で提出を求められる書類があるので注意が必要です。
- 不動産(自宅など)を保有する場合
- 不動産登記簿謄本履歴事項全部証明書など
- 借家の場合は賃貸借契約書
- 自動車を保有する場合
- 自動車登録書
- ゴルフ会員権を保有する場合
- 会員証書の写し
- 株券、有価証券を保有する場合
- 株券、証券等の写し
- 任意保険をかけている方
- 保険証券の写し
- 会社員の方
- 給与明細数カ月分
- 直近の源泉徴収票
- (退職金制度がある場合は退職金に関わる情報)
- (会社での積立がある場合は積立明細)
- 家族(同居人)に収入がある方
- 同居人の給与明細や源泉徴収票
- 生活保護の方
- 受給証明書
- 過去に資産を処分した方
- 不動産、自動車、株券など処分したときの価格を証明する書類
- 保険の場合は返戻金明細
上記の生活状況や資産状況で提出物をがんばって集める必要があるので、自己破産はかなり労力を必要とすることが分かります。
書類の提出タイミングなどは相談が可能なので、申立の手続きは先に進めることは可能です。
会社代表者・自営業者の自己破産
会社の代表者や自営業者の場合は上記した内容に加えて、以下の情報も別途添付が必要です。
- 報告書類
- 事業の経営状況を記した書類
- 会社の整理予定(会社の破産申立の有無)、在庫、資産処分の状況
- 決算資料
- 売掛金など将来の収入予測など
- 登記簿謄本(法人)
- 登記簿謄本(不動産資産がある場合)
- 確定申告(個人事業主)
- 賃貸借契約書(賃貸での利用がある場合)
- 税金申告書類の控え
上記以外にも必要な書類があれば求められることがあります。
自己破産は書類集めが大変といっても過言ではありません。
(まとめ)自己破産を行う前に確認しておくべき3つこと
上記した自己破産の流れや内容はスムーズに破産手続きが行われた場合のケースとなり、実際は資産処分などを行う必要があります。
重要なのは以下の3つのポイントを確認しておく必要があります。
- 資産処分
- 自己破産に要する期間
- 免責不可の可能性
1.資産処分について
自己破産を行う上で資産がある場合は処分しなければなりません。
返済の財源になるものは差し押さえされ、任意売却などによって資産処分され、債権者への返済原資に補填されます。
債務者は99万円までの預金は残すことができ、また、家財も生活に必要なものは残すことができます。売却して20万円以上になるような資産は処分する必要があり、その処分の決定などに時間を要することになります。
資産処分が行われないと破産手続きが進みませんので、多くの時間と手間を要することを確認しなければなりません。
2.自己破産に要する期間
資産が無い方でも最速で4ヶ月、通常は半年程度、自己破産が完了するまで時間を要します。
資産が多い方はさらに時間がかかる場合があります。
自己破産に時間がかかる要因として、手続きそのものも多少は時間がかかりますが、任意売却などの資産処分に時間がかかります。
提出書類を集めるのも時間がかかりますが、こちらはどちらかと言えば手間がかかります。
役所や法務局へ行って書類を集めたりするので、移動なども大変です。
特に不動産などがある場合は売却にも時間がかかるので相当時間を要することは考えておくべきです。
3.免責不可になる可能性
免責とは借金帳消しとなることをいいますが、必ずしも借金免責が確実に行われるということではありません。
「免責不許可事由該当行為」に該当する場合、破産の申立を行って受理されたとしても全て免責とならない決定がなされることがあります。
- 虚偽
- 破産理由の虚偽説明があった場合
- 10年以内の免責決定
- 10年以内に免責決定された過去がある場合
- 隠蔽行為
- 金融資産の隠蔽が発覚した場合
- 過怠破産罪に該当する場合
- ギャンブル、賭博による著しい浪費
- 信用取引によるモノの処分
- クレジットカードでの買い物に対する即時の転売、質入れによる処分
自己破産による免責が決定されなかった場合は債権者との関係は続くことになりますので、任意整理など別の方法を検討しなければなりません。
以上、自己破産について解説しましたが、ご自身で行える自己破産とはいえかなりハードルは高いと考えられます。
それでもお金をかけないで債務整理を行うなら自己破産も選択肢の一つですが、手間と時間はかなりかかるので、任意整理による解決をまずは検討すべきです。
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